日本公衆衛生雑誌
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原著
「公衆衛生基本活動遂行尺度」の開発と信頼性・妥当性の検証 保健師の全国調査結果から
岩本 里織岡本 玲子塩見 美抄
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2008 年 55 巻 9 号 p. 629-639

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抄録

目的 近年人々のヘルスニーズが多様化していることや,保健師の働く場が変化していることなどにより,一人ひとりの保健師に一層高い専門能力が求められ,保健師基礎教育や現任教育の充実が望まれている。本研究では保健師の専門能力の向上を目指して,住民の健康・幸福の公平を護る活動能力を測定する評価尺度(「公衆衛生基本活動遂行尺度」Scale for Basic Action relevant to Public Health:以下 BAPH 尺度と略す)を開発し,その信頼性・妥当性を検証することを目的とする。
研究方法 全国保健所(4 分の 1 抽出:135保健所),全国市町村保健センター(20分の 1 抽出:115保健センター)を無作為抽出し,そこに常勤する保健師全員を対象とした。調査方法は郵送法による自記式質問紙調査,調査期間は平成17年12月から平成18年 3 月である。質問紙調査の内容は,既存文献からの項目選定後に作成した尺度試案と,年齢,保健師経験年数,学歴,職位等である。
結果 送付施設数250中184(73.6%)から返送があり,回収数1,261人(70.1%),うち有効回答1,112人を分析対象とした。1)公衆衛生基本活動(18項目)の因子分析の結果,「アクセスと公平性の促進」(5 項目),「サービスの質と量の評価」(4 項目),「健康危機への予防的対応」(3 項目)の 3 つの下位尺度から成る「公衆衛生基本活動遂行尺度」12項目が作成された。2)「公衆衛生基本活動遂行尺度」および下位尺度「アクセスと公平性の促進」,「サービスの質と量の評価」,「健康危機への予防的対応」の Cronbach's α 信頼性係数はそれぞれ0.91, 0.84, 0.86, 0.82であった。3)尺度全体・下位尺度と 2 つの基準関連項目との相関係数は,0.44~0.57であり相関が認められた。4)BAPH 尺度は,経験年数が高くなるにつれ高得点を得,また学会発表の経験や専門誌の定期購読の有無により得点に差があった。
結論 BAPH 尺度は,保健師が住民の健康と幸福を護るための公衆衛生基本活動の遂行能力を測定するものとして信頼性,妥当性,有用性が確認された。これまで保健師の公衆衛生活動の能力を測定する尺度がなかったことから,本尺度は保健師の実践や教育に活用できる新たな知見を提案できたと考える。今後保健師の基礎教育や現任教育の評価として用いることが可能である。

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© 2008 日本公衆衛生学会
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