日本公衆衛生雑誌
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原著
幼児の行動特性別にみた母親の育児困難感とその関連要因
坂田 祥成瀬 昂田口 敦子村嶋 幸代
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2014 年 61 巻 1 号 p. 3-15

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抄録

目的 幼児をもつ母親を対象に,子どもの行動特性の分類ごとに母親の育児困難感とその関連要因を明らかにし,支援方法を検討する。
方法 A 県内 5 市および首都圏近郊 3 市の 3 歳児健康診査(2009年 7 月~9 月)に来所した母親を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。対象者を子どもの行動特性によって,Low Need 群,内向的特性群,外向的特性群,混合型特性群の 4 群に分類し,群ごとに育児困難感を従属変数とした重回帰分析を行った。
結果 回収数818票(回収率48.8%)のうち,回答に欠損のあったもの等計43人を除く775人を分析対象とした(有効回答率46.3%)。Low Need 群の子どもを持つ母親は332人,内向的特性群は104人,外向的特性群は230人,混合型特性群は109人であった。多重比較の結果,Low Need 群よりも他 3 群の方が,育児困難感が高く,混合型特性群,外向的特性群,内向的特性群の順に育児困難感が高い傾向があった。育児困難感を従属変数とした重回帰分析の結果,いずれの行動特性群でも,自己効力感が低いこと,家族からの評価的サポートを受けていないことが,育児困難感の高さに関連していた。Low Need 群では,きょうだいへの対応困難感がある場合に育児困難感が高かった。内向的特性群では,母親が若いこと,専業主婦であること,子どもが男児であることが母親の育児困難感の高さに関連していた。外向的特性群では,母親が若いこと,母親の健康状態がよくないこと,集合住宅に住んでいること,友人からの評価的サポートを受けていないことが,母親の育児困難感の高さに関連していた。混合型特性群では,母親が専業主婦であること,きょうだいへの対応困難感があること,友人からの評価的サポートを受けていないことが,母親の育児困難感の高さに関連していた。
結論 子どもの行動特性によって,母親の育児困難感とその関連要因は異なっていた。母親の育児困難感軽減のためには,子どもの行動特性にかかわらず,その自己効力感を高め,家族からの評価的サポートを得られるような支援が重要である。内向的特性群の母親には,子どもの特性に対する理解を促し,子どもの特性そのものに対する不安や戸惑いを軽減する支援が重要である。外向的特性群の母親には,子どもの外向的行動に対処する際の母親の負担を軽減し,その対処行動を肯定的に評価することが重要である。混合型特性群は他群よりも複雑な育児困難感を持っている可能性があるため,より専門的な支援が必要であると考えられた。

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© 2014 日本公衆衛生学会
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