2021 年 41 巻 6 号 p. 485-489
症例は24歳男性。排尿困難と右下腹部痛を主訴に近医受診し抗菌薬内服治療を行った。1ヵ月間症状が持続するため当院を紹介受診した。画像上虫垂の腫大,回盲部脂肪織上昇と右水腎を認めた。急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を行った。術後すみやかに症状軽快したため5日目に退院した。退院後に病理診断が確定し放線菌症の診断であった。退院後3日目に腹痛と排尿障害が再燃し,再度当院を受診した。CTで回盲部周囲に膿瘍を認め,血液検査で炎症反応上昇あり,放線菌による遺残膿瘍と診断した。ベンジルペニシリンカリウムを2週間点滴静注し,退院後1ヵ月間ミノサイクリンの内服を行った。尿路症状を契機に発症する腹部放線菌症はまれであり,非特異的な経過を有する虫垂炎疑診患者においては本症の可能性も念頭に置くことで,再入院や不完全な抗菌薬治療となることを防ぐことができると考えられた。