症例は81歳男性。突然の腹部全体痛のため当院内科を救急受診した。血液生化学検査で重度の脱水による腎障害,ならびに高度の炎症所見を認めた。単純CTでびまん性に小腸拡張像を認めたが,明らかな閉塞機転や腸管穿孔を認めなかったため内科で保存的加療を開始した。腹部症状の増悪はなく,腎機能が回復した発症72時間後の造影CTで上腸間膜動脈中枢閉塞と腎動脈下腹部大動脈の完全閉塞を認めたため当科に紹介された。大動脈閉塞により側副血行路が発達していたため腸管血流は不十分ながら確保されていた。ただちにヘパリン持続静注,プロスタグランジンE1静注を開始した。血栓の完全溶解は得られなかったが,腸管血流の改善とともに小腸拡張像は改善し,経口摂取,内服抗血栓療法が可能となり第91病日に独歩で退院した。