日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
十二指腸憩室出血に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した1例
山下 俊田中 信孝高橋 道郎
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2009 年 29 巻 7 号 p. 1025-1028

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抄録

症例は78歳,女性。2008年9月,吐血あり当院を受診する。内視鏡検査でVater乳頭の2cm口側に暗赤色の隆起を認め,この周囲より持続的に湧き出る出血を認めた。内視鏡的に凝固止血は不能で,血管造影検査を行い後上膵十二指腸動脈分枝より造影剤漏出を認めたため,この前後を塞栓したが翌日以降も貧血の進行と黒色便を認めた。造影CT検査で十二指腸傍乳頭部または膵頭部の腫瘍性病変からの出血が疑われたため,入院4日目に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的検査にてVater乳頭近傍に憩室を認め,出血の責任病変と考えられた。憩室には潰瘍が形成され,周囲には肉芽組織がみられた。本邦では1974年~2008年に十二指腸憩室出血は90例報告されており,近年では大半の症例で内視鏡的止血がなされている。本例のごとく保存的治療が奏効せず腫瘍性病変も否定できない十二指腸憩室出血例に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した報告はこれまでないため文献的考察を加えて報告する。

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© 2009 日本腹部救急医学会
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