甲状腺・副甲状腺手術の術後出血は,その対応を誤ると稀に死亡事故を起こす極めて重大な合併症である。甲状腺専門病院での術後出血に対する取り組みを紹介する。
術後出血時の初期対応は,不用意な挿管を避け開創することを優先することが重要である。また,看護部のスタッフ教育として病棟看護師が頸部腫脹を的確に判定し対応できるように,看護部では,看護師のスキル調査をしてレベルの向上を目指している。術後出血に実際に遭遇する看護師は少数であるので,手術介助トレーニング,DVD教育ビデオを通して術後出血時のイメージトレーニングも行っている。また,病棟でいつでもスムーズに躊躇せず開創ができるように,病棟に救急カートとは別に病棟開創カートを準備している。医師と看護師が術後出血は初期対応を誤ると死亡事故につながるという共通の認識を持ち,連携することが重要である。