糖尿病
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著しい膵外分泌腺萎縮を伴ったインスリン依存型糖尿病の1例
中西 幸二小林 哲郎杉本 忠夫伊藤 徳治小坂 樹徳原 満
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1987 年 30 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

症例は発症時45歳の女性昭和40年12月21日より突然の口渇, 多尿, 多飲, 全身倦怠感が出現.初診時空腹時血糖318mg/dl, 尿アセトン体陽性であった.インスリン療法を開始, 続行したが, 空腹時血糖は経過中約70~400mg/dlと動揺し, たびたび尿アセトン体が陽性となり, インスリン依存型糖尿病 (Insulindependent diabctcs mellitus: IDDM) と考えられた.昭和50年に網膜症, 昭和51年に神経症, 腎症が出現した.昭和55年に腎不全にて死亡したが, 末期には頻回の下痢がみられた.膵の病理所見では重量34.59と著しく萎縮.組織学的に外分泌部は腺がびまん性に著しく萎縮し, 問質には線維化およびリンパ球の浸潤が認められた.細動脈の強い硬化は認められなかった.膵ラ氏島数はほぼ正常に保たれていたが, 大小不同が認められた.各膵ホルモンのPAP法による免疫組織化学所見ではラ氏島にはB細胞がほとんど認められず, 大部分がA細胞よりなっていた.IDDMの膵外分泌障害には各膵消化酵素の分泌不全, ラ氏島の周囲の外分泌腺の萎縮などが報告され, ラ氏島からのインスリン灌流不全が原因の1つと考えられる.本例ではリンパ球浸潤を伴った著明な膵外分泌腺の萎縮が認められ, 一方ラ氏島のB細胞は消失しておりIDDMの所見に一致するものであった.本例においてはIDDMの発症と関係し膵外分泌腺の萎縮が惹起された可能性が考えられIDDMの膵病変は多様であることが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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