糖尿病
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糖尿病患者における少量インスリン静注時の心電図変化と血清カリウム, 血漿cAMPの変動との関係
棚橋 忍梶沼 宏石渡 和男
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1980 年 23 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

健常者6例 (N群), 糖尿病患者27例 (D群) に, MC Actrapid insulin 0, 05U/kgを静注した際の心電図変化および, それらと血清カリウム, 血漿cAMPの変動との関係について検討した.D群をさらにインスジン静注後低血糖症状を認めたか, もしくは最低血糖値が49mg/dl以下に低下した症例14例 (D-I群), 低血糖症状を認めず最低血糖値も50mg/dl以上であった症例13例 (D-III群) に分けて観察した.
インスリン静注後の最低血糖値はN群が20分で38.2±4.3 (M±SE) mg/dl, D-I群が30分で462土2.3mg/dl, D-III群が60分で96, 8土10.2mg/dlとなった.インスリン静注後のI, II, V5誘導のT波%変化率はN, D-I群で同程度 (-40~-50%) みられたがD-II群のそれはN, D-I群より軽度 (-20%) であった.血清カリウム値は3群とも30分, 60分において同じ程度に低下した (30分: N群3.6±0.1, D-1群3.5±0.1, D-R群3.6±0.1mEq/L).血漿cAMPはN群が30分, D-I群が60分で頂値を示し, それぞれ43.5±7.3, 30.3土2, 9pmol/mlであった.D-II群の血漿cAMPには変動がみられなかった、各時点の血清カリウムの低下とV5誘導のT波の%変化率の間には相関を認めなかったが, 血漿cAMPの上昇とV5誘導のT波の%変化率の間にはN群で30分, D-1群で60分に有意な負の相関を認めた.健常者, 糖尿病患者において, インスリン静注による低血糖時の心電図上のT波の平低化には, 血清カリウムの低下のみならず, 低血糖の際に放出されるエピネフリンが関与しているものと思われる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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