糖尿病
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糖尿病診療ガイドラインの有用性に関する検討―目標値達成数と心血管イベントの関係―
松本 一成藤島 圭一郎森内 昭江最勝寺 弘恵
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2010 年 53 巻 6 号 p. 396-401

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抄録

糖尿病診療ガイドラインに示される治療目標値は,HbA1C 6.5%未満,血圧130/80mmHg未満,LDL-コレステロール(LDL-C)120mg/dl未満である.我々は368例の心血管病の既往がない2型糖尿病患者を平均6年間追跡調査して,心血管イベントの予防効果に対するガイドライン目標値の臨床的有用性について検討した.エンドポイントは心筋梗塞,狭心症,脳梗塞,突然死と設定した.観察期間中に51例が心血管イベントを来たした.イベント発症例は,年齢,収縮期血圧,HbA1C,随時血糖値,LDL-Cが有意に高値であり,HDL-Cが低値であった.ガイドラインの達成率は,HbA1C 6.5%未満がイベントの有無でそれぞれ27.5%と45.4%であった(p<0.05).同様に血圧130/80mmHg未満は15.7% vs. 42.0%(p<0.01)であった.LDL-C 120mg/dl未満は68.6% vs. 70.3%で有意差を認めなかった.ガイドラインの目標値を, 1)0または1項目達成, 2)2項目達成, 3)3項目とも達成の3群に分類してKaplan-Meier生存分析を行なったところ,群間でイベント発症率に有意差を認めた(p<0.01).相対的なイベント発症率は0または1項目達成例と比較して,2項目達成で64.4%減少し,3項目達成では79.9%減少した.同様の結果はCox比例ハザードモデルからも得られた(ハザード比の減少率はそれぞれ68.7%および82.6%).以上のことから,心血管イベントの発症者はガイドラインの目標値達成率が低いことが示唆された.そして,糖尿病診療ガイドライン目標値は,2項目以上達成できれば,心血管イベントを抑制できる可能性が高まると思われた.

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© 2010 一般社団法人 日本糖尿病学会
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