Bird Research
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原著論文
沖縄島の亜熱帯照葉樹林におけるヤマガラの繁殖生態
関 伸一
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J-STAGE Data 電子付録

2023 年 19 巻 p. A51-A61

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抄録

ヤマガラSittiparus varius は日本列島周辺地域とユーラシア大陸東部に広く生息する樹洞営巣性の種で,巣箱も利用する.これまで本州や伊豆諸島などでの繁殖生態は詳しく調べられているが,分布域南部の九州や琉球列島での報告は少ない.本研究では,沖縄島の亜熱帯照葉樹林で2019–2022年に延べ300個の巣箱においてヤマガラの繁殖生態を調査した.調査ではトレイルカメラを加工した簡易な記録装置(巣箱カメラ)をもちいて野外調査の記録を補完した.最も早い初卵日は推定で2月18日,初卵日の最も集中する時期は3月上旬で,いずれも本州での記録にくらべて約1ヶ月早かった.また,一腹卵数は平均3.7卵で,本州での平均にくらべて2卵以上少なく,ヤマガラでも初卵日や一腹卵数に緯度勾配があることを示唆する結果となった.産卵が確認された巣で雛が巣立った割合は35.1%と低く,繁殖失敗の主な要因は卵や雛の捕食だった.ヤマガラの産卵が確認された94巣のうち36巣には予め巣箱カメラが設置されていて,途中で故障した2台を除く34台で詳細な繁殖経過の記録が得られた.トレイルカメラを加工した安価な巣箱カメラは繁殖に関わる生活史形質の推定に有効な手法であることが示された.

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