日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
大学病院における新たな管理手法である『テナント式管理会計』と『院内取引制度』の構築と導入の評価
−「医療の質と経営の質の両立によるコスト削減」−
藤井 進高崎 光浩佛淵 孝夫
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2011 年 12 巻 1 号 p. 35-45

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抄録

 大学病院においては診療科毎の損益分岐点が把握しづらく、人や病床などの医療資源の最適な配置が困難な状態にある。質の高い医療を提供する為にも経営基盤の安定化は必要で、医療資源が診療科毎で効率的に活用されているかわかる管理会計が求められた。そこで各診療科を専門病院とし、その集合体として管理する『テナント式管理』と、部門間に依存関係があるサービスに、収入とコストの関係を用いる『院内取引制度』という概念を利用したシステムを構築した。算出した指標を基に入院医業収益を採算部門と非採算部門で個々に評価した。

 利用データはDPC、人件費、薬剤・材料購入費、減価償却費、管理費とした。損益分析の結果、採算部門は11/27部門、非採算部門は5/5部門が適正であった。日別収支の推移から損益モデルを(1)ホスピタルフィー依存型、(2)ドクターフィー依存型、(3)全日でマイナスになる不採算型、(4)初期医療密度が高く後半に損益が向上するリカバリ型、(5)その他の5型に分類できた。

 損益が伴わない在院日数の長期化による病床稼働率の向上は、増収減益であると可視化された。経営的に有効な在院日数にする為には、病床数の最適化、医療の標準化、患者にその入院期間を納得させる満足度の向上、地域連携が必要で、「社会、医療機関、患者に効率的で質の高い医療の提供」が最も低コストであり、医療の質と経営の質は両立されると示唆された。

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