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原著論文
小脳性運動失調Wob/tマウスへの強制歩行訓練による体幹振戦の改善
別府 秀彦武田 湖太郎富田 豊Orand Abbas水谷 謙明玉井 育子高柳 尚貴高橋 久英園田 茂
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2016 年 15 巻 2 号 p. 62-70

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抄録

ヒトでは運動失調の歩行異常に重心動揺が見られる。B6-wob/tマウス(Wob/t)は小脳プルキンエ細胞の変性と脱落により歩行失調が見られことから、重心動揺の測定を試みた。評価するパラメータとして、単位時間あたりの水平方向の軌跡長(trajectory length, TL)と鉛直方向の体重変動(weight variance, WV)を用い、wild typeであるC57BL/6J(B6)マウスと比較した。まず歩行失調を示す四肢の協調運動を見るためにrotarod試験を行ったところ、B6に対しWob/tの回転棒上での歩行持続時間は短く(p<0.001)運動失調であることが示された。さらにオープンフィルド内で、休止状態(standstill state)時のTLとWVを測定したところ、いずれもWob/tの重心動揺はB6に対し有意に強い振幅が見られた(p<0.001)。さらにWob/tに強制歩行訓練(Ex)を行い、体幹振戦に与える影響をWob/t非運動(NEx)群と比較した。その結果、Ex群は、NEx群に対し、TL、WVともに振幅が有意に(p<0.05)弱くなった。またEx群とB6群のTLは有意差(p<0.05)があるものの、WVでは有意差が無くなった。一方、休息時(resting state)はTL、WVともに3群間に差が認められなかった。以上の結果から、B6に対しWob/tは、TLとWVの重心動揺の振幅が大きいことが示された。しかし強制運動歩行訓練を行ったEx群はNEx群よりも重心動揺の振戦が弱められた。以上の結果はWob/tの歩行失調の原因は、小脳プルキンエ細胞脱落による体幹の振戦の影響を受けていること、強制歩行運動により振戦が弱まることが示された。また、resting stateにおいて、B6群、Wob/tのNEx群、Ex群、のTLとWVの重心動揺に有為差が認められなかったのは、休息時が傾眠状態にあり、Wob/tの小脳性振戦はヒトと同様、運動時に現れる姿勢振戦で同じと考えられる。

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© 2016 コ・メディカル形態機能学会
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