行動経済学では,時間軸における選好の逆転現象を割引で説明する場合が多い.一方,心理学や行動意思決定理論の分野では,時間を含めた心理的距離の変化による選好の逆転を解釈レベル理論の枠組みで分析する研究が多数,存在する.本研究では,割引の概念を解釈レベル理論に組み込んだ割引解釈レベルモデル(DCLM)を提案する.具体的には,割引の適用を時間も含めた一般的な心理的距離に拡張し,割引傾向の違いに関する2つの要因,量的効果と符号効果を仮定する.本論文では,これらを3つのプロポジションとして提案し,ロトの選択に関するアンケート調査に基づいて統計的に検証する.その結果,DCLMが時間軸も含めた一般的な心理的距離の変化による選好の逆転を説明,予測できることを示す.