2021 年 57 巻 3 号 p. 639-644
症例は11歳女児.急激な上腹部の膨隆と発熱・腹痛で救急搬送された.CT検査で肝下面に巨大な囊胞と肝内胆管の拡張を認め,当初は肝十二指腸間膜近傍の腹腔内リンパ管腫と診断した.囊胞が巨大であったため,悪性所見が否定された後の入院後3日目に超音波ガイド下経皮的囊胞穿刺ドレナージを施行した.囊胞が著明に縮小したあとのCT検査で初めて孤立性非寄生虫性肝囊胞(肝囊胞)と診断され,入院7日目に腹腔鏡下開窓術を施行した.手術では術後出血・胆汁漏防止のために腹腔鏡用血管シーリングシステムを用いた.術後5日目に合併症なく退院し,術後3か月現在,再発なく経過している.小児巨大肝囊胞は,悪性腫瘍の可能性が極めて低ければ囊胞ドレナージを先行することが症状の緩和だけでなく確定診断や手術にも有用である.