日本小児外科学会雑誌
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症例報告
黄疸・便色の改善と増悪を繰り返し診断に難渋した胆道閉鎖症の1例
真子 絢子久守 孝司石橋 脩一上野 悠小山 千草荒木 亜寿香田島 義証
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2021 年 57 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

日齢52からの白色便を契機に胆道閉鎖症を疑われ,術中胆道造影(以下,胆道造影)で総肝管を含む上流の胆管の描出がみられなかったものの,高ビリルビン血症の改善と増悪を繰り返し,その間も断続的に黄色便を認め,診断に苦慮した胆道閉鎖症の1例を経験した.肝生検でグリソン鞘内の胆管増生を認め,2度目の胆道造影でも上流胆管の描出がみられなかったことから,最終的に胆道閉鎖症と診断し,日齢97に葛西手術を施行した.本症例では,初診時に貧血(ヘモグロビン値9.7 g/dl)を認め,手術に至るまでの経過中,ヘモグロビン値と血中ビリルビン値はパラレルに連動しながら推移しており,貧血に伴うビリルビン生成低下を減黄としてとらえていたと思われた.胆道閉鎖症の診断過程において,胆道造影および根治手術を考慮する段階で便色や黄疸などの臨床症状の経過が典型例と乖離する場合,血中ヘモグロビン値を含めた総合的な判断が必要と思われた.

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