2012 年 48 巻 5 号 p. 844-848
症例は9歳女児.3点式シートベルト着用にて助手席後部に乗車中,正面より電柱に衝突し救急搬送された.精査にて膵挫滅と十二指腸水平脚の損傷が疑われた.明らかな主膵管の損傷や消化管穿孔の所見はなく,保存的治療を行い,第40病日に退院した.本症例は膵鉤部,十二指腸水平脚の限局性の損傷であり,受傷機転は,シートベルトと椎体間の圧迫によるものと考えられた.小児外傷性膵損傷の受傷機転は自転車のhandle bar injuryが特徴的とされ,シートベルトに起因する報告例は稀である.本症例ではジュニアシートではなく,大人用のシートベルトを装着していた事で,適切な位置にシートベルトが装着されていなかった可能性があり,受傷原因と考えられた.シートベルトの適切な使用を警鐘するという点においても貴重な症例と考えられたため,報告した.