2008 年 44 巻 2 号 p. 112-117
【目的】当科における熱傷患者の臨床像及び治療法について検討し,特に近年導入した創傷被覆材による早期occlusive dressingの有用性について評価を行う.【対象と方法】1994年1月から2003年12月の間,当科で加療した熱傷患者57例を対象とし,臨床像,治療内容,転帰をretrospectiveに検討した.【結果】患者年齢は3歳以下が全体の約80%を占めた.受傷原因は,熱性液体が43例(75%)で最多であった.部位は,顔面・頸部・胸部が45%で最多だった.受傷面積は,10%以上が約40%を占めた.深度は,I度・浅達性II度(SDB)混在10例,深達性II度(DDB)45例,III度5例だった.II度(全例DDB)かつ受傷面積10%以上の21例の局所治療別転帰は,非occlusive dressing群12例では,肥厚性瘢痕9例,色素沈着2例であったのに対し,早期occlusive dressing群9例では軽度肥厚性瘢痕3例色素沈着1例であった.非occlusive dressing 群の深達性II度及びIII度の患者3例が晩期に植皮,瘢痕切除を要した.術後2週間以内の早期植皮を行った症例はなかった.【結語】当科における検討の結果,患者年齢層は3歳以下に集中し,受傷原因・機転は熱性液体を広範に浴びた症例が多かった.受傷早期からocclusive dressingを使用した治療法は,創部安静を保つことが困難である小児において,創部保護が確実で包交回数を減少させることができ,瘢痕形成予防にも有効であったと考えられた.