2001 年 37 巻 5 号 p. 815-820
腎腫瘍との鑑別が困難であった, 乳児腎膿瘍の1例を経験した.症例は生後8カ月の女児, 生後7カ月時に尿路感染症状で発症し近医入院となった.腹部CTおよびMRIで, 左腎上極に多房性嚢胞性腫瘤像を認め, 腎腫瘍の疑いで精査加療目的に当院へ転院となった.血液検査上, 軽度の貧血を認め, また各腫瘍マーカーの異常は認めなかった.2週間後の腹部CT, MRIの再検では, 腫瘤は縮小し, 嚢胞も消失傾向であり, 実質成分が認められた.排尿時膀胱尿道造影では左側にI度の膀胱尿管逆流現象が認められた.腫瘤のvascularityの評価のため造影超音波検査を行ったところ, 腫瘤はhypovascularであった.確定診断のため, 超音波ガイド下に経皮的針生検を施行し, 軽度の炎症所見を伴う腎組織との診断を得た.腎の嚢胞性病変では, 膀胱尿管逆流現象の有無, 病変の経時的変化の観察が診断上重要と思われた.