1998 年 34 巻 2 号 p. 306-311
無脾症候群に伴うnonrotation, 十二指腸前門脈症に発症した胃軸捻症(以下, 本症)を経験した.文献的考察と共に, 合併奇形と本症発症との関連について検討した.症例は8歳の男児である.複雑心奇形を伴った無脾症候群にて, 両側Blalock-Taussigシャント手術を受け, 経過観察中であった.夕食後突然上腹部痛, 嘔吐が出現した.上部消化管造影にて本症と診断した.発症後5日目に試験開腹を行った.開腹にょり無脾症, nonrotation, 十二指腸前門脈を認め, これらの合併奇形が本症発症の誘因となっていたと考えられた.胃前方固定術を施行した.術後経過は良好である.過去25年間に本邦で報告された小児の本症は393例で, この内合併奇形に関する記載のあるものは77例であった.延べ98疾患の内訳は脾疾患19, 横隔膜疾患15, 腸回転異常14, 心疾患9, 肥厚性幽門狭窄症8例等であった.十二指腸前門脈の報告例は4例であるが, 無脾症候群およびnonrotationの合併例の報告は自験例を含め3例に過ぎない.合併奇形の多くは本症発症に関与しているものと考えられた.