1993 年 29 巻 1 号 p. 118-124
胆道閉鎖症の治療成績は近年著しく向上し,術後黄疸消失率は70%に連すると報告されている. しかしながら,十二指腸前門脈を伴う胆道閉鎖症の場合,本邦報告例での集計によれば術後黄疸消失率は13%をすぎず,十二指腸前門脈を伴わないものに比べてその予後は不良である. 過去15年間に当科において経験した胆道閉鎖症66例の内,4例に十二指腸前門脈の合併を認めた. これら4例は生後63日目から85日目に肝門部空腸吻合術を施行したが術後1年以内に全例死亡した. 十二指腸前門脈を伴う胆道閉鎖症の予後が不良である要因として初回手術時の肝の線維化が月齢に比し高度である事や,肝門部における血管及び胆道系の走行異常の為に肝門部同定が困難である事が指摘されている. 今回当科にて経験した4例における初回手術時の肝の線維化の程度は2例が月齢に比し進行しているものの他の2例の線維化は軽度であり,自験例おいてに術後胆汁流出と肝の線維化の程度との因果関係は明かではなかった. 次に我々の集計し得た十二指腸前門脈を伴う胆道閉鎖症の本邦報告14例と自験例4例を加えた18例について,肝門部形態を肝門部結合組織の有無と門脈肝動脈の肝流入部の位置及び形態異常の有無により4群に分類し,術後胆汁排泄の程度と長期予後につき検討した. その結果,結合組織の連続性がなく肝門部結合組織を認め得なかった群での術後胆汁排泄が不良であり,肝門部結合組織を見つけ得る事が術後胆汁排泄の程度を左右すると考えらえた. 長期予後においては肝門部形態異常が直接関連するとは言えなかった.