Journal of UOEH
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[総説]
災害事象による労働者の健康影響に関する文献的考察
五十嵐 侑 森 晃爾
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2015 年 37 巻 3 号 p. 203-216

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抄録

自然災害や工場事故,犯罪などの災害事象がときに職場で発生しており,多くの労働者はそれらの事象への対応によって,直接の被災だけではなく,悲惨な経験や化学物質など,さまざまな健康障害要因に曝露する可能性がある.このような要因による健康影響を最小限にするためには,産業保健専門職は迅速かつ的確な対応を行う必要があるが,それを可能とするためには過去の事例の経験を参考にすることが有効と考えられるため,災害事象による労働者の健康影響に関する文献上の知見を整理した.PubMedを用いて検索し,24編の文献が抽出された.文献抽出には,一般的な労働者に対象を絞り,救急隊や消防隊などの専門職は除外した結果の対象文献を健康影響別に整理すると,メンタルヘルス13編,呼吸器系5編,心血管系2編,筋骨格系1編,皮膚系1編,神経系1編,全身症状1編であり,災害事象の発生数が公表されている論文は極めて少ない.これらの健康影響を原因の所在などで分類すると,原因が,1.災害事象によって発生した労働環境や生活環境の悪化と関連したもの,2.災害事象によって発生した健康障害要因と直接関連したものに分けられる.過去の事例の経験をまとめた本総説は,災害事象発生時の産業保健専門職の対応を向上させる上で有意義と考えられる.また,今後も災害事象による労働者への健康影響についての知見の蓄積が求められる.

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© 2015 産業医科大学
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