脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
特集 小児脳神経外科
小児脳神経損傷後の回復
栗原 まな
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 25 巻 4 号 p. 330-337

詳細
抄録

 当センターでは後天性脳損傷児のリハビリテーションに力を入れており, 脳損傷回復期の小児を長期にわたり診療している. われわれは「神経回復」を「機能回復」ととらえて評価していく. 小児において機能回復は成人になるまで続いていくが, それは小児の脳がもつ可塑性と発達の2つの要素に依っている.
 小児の後天性脳損傷の代表は脳外傷 (TBI), 急性脳症, 低酸素性脳症, 脳血管障害 (CVA) であるが, 今回は当センターで入院リハビリテーションを行った小児期発症の脳神経外科疾患として, TBI 210例とCVA 71例 (出血42例, 梗塞29例) の実態を報告した. TBIの原因は交通事故151例, 虐待29例などであり, 身体障害109例, 知的障害100例, 高次脳機能障害167例, てんかん54例などを後遺していた. TBI全体の機能予後は中等度であったが, 交通事故の予後が中等度であるのに比べ, 虐待の予後は非常に悪かった. CVAの原因は脳出血では脳動静脈奇形破裂が32例と大半を占め, 脳梗塞では脳外傷に伴う場合, 脳血管異常, 周術期がそれぞれ1/3であった. CVA全体の後遺症は, 身体障害64例, 知的障害22例, 高次脳機能障害57例, てんかん11例などであった. 脳出血に比べ, 脳梗塞のほうが障害がやや重度であった. CVA全体の予後は比較的良好であった. 10年以上経過を追っているTBI例の神経心理学的検査の変化などを提示し, リハビリテーションの有用性についても述べた.

著者関連情報
© 2016 日本脳神経外科コングレス
前の記事 次の記事
feedback
Top