2014 年 40 巻 4 号 p. 468-472
甲状腺分化癌は一般に予後良好であるが,縦隔リンパ節転移を放置すれば気道や食道にいずれ影響を及ぼしQOL低下を招くことから,たとえ遠隔転移があったとしても手術適応となることが珍しくない。手術適応には切除可能かどうかという点のほかに,年齢,耐術能なども充分考慮しなければならないが,気道も食道も保存できるような場合は,永久気管孔を増設する必要がないので,切除において安全な視野,ワーキングスペースを得るために胸郭をいったん切開,縦隔を開放し,最後に骨を再び固定すればよい。このような場合に胸骨L字(または逆L字)切開によるアプローチは良い適応となる。本法は上縦隔の郭清を問題なく行うことが可能で,QOL低下が少なく済む有用な方法と考えられる。