2019 年 110 巻 2 号 p. 86-91
(目的) エンザルタミド導入後の全身倦怠感は,経過・程度・対処法に関して不明な点が多い.我々は,エンザルタミド導入後に認めた全身倦怠感を,Cancer Fatigue Scale(CFS)を用いた量的・質的評価を行った.また,全身倦怠感に対する補中益気湯の有効性の検証を行った.
(対象と方法) 去勢抵抗性前立腺癌3症例で,エンザルタミド導入後に全身倦怠感を認めた.補中益気湯を処方し,CFSを連日記入して全身倦怠感の経過観察を行った.また,2014年から当院でエンザルタミドを処方された患者を,全身倦怠感を認めた群と認めなかった群に分けて比較し,本3症例の経過を踏まえて考察した.
(結果) 2症例では全身倦怠感が軽快したが,1症例では増悪した.いずれの症例でもCFSを用いた全身倦怠感の経過観察は有効であった.全身倦怠感を認めない17症例の平均投薬期間は265.6日間で,全身倦怠感を認めた14症例では投薬期間の平均は173.2日間であった.そのうち,補中益気湯の処方がない11症例の平均投薬期間は167.8日間で,補中益気湯を処方した3症例の投薬期間の平均は193.0日間であった.群間に有意差は認めなかった.
(考察) CFSはエンザルタミド導入後の全身倦怠感を経過観察で有用な問診票である.補中益気湯はエンザルタミド導入後の全身倦怠感に有効な対処法の可能性が示唆された.