教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
原著[実践研究]
鉄道従業員向けアナウンス研修の転移促進手法に関する実験的検討
山内 香奈菊地 史倫
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 64 巻 1 号 p. 131-143

詳細
抄録

 本研究は, 鉄道輸送障害時における鉄道従業員のアナウンス業務にみられる慣習的行動を目標行動へと主体的に変容させるための職場研修(DVD教材の視聴)を取り上げ, 研修の効果の持続性を高めるフォローアップのあり方を不等価4群事前事後テストデザインの準実験により検証した。首都圏の鉄道会社1社の543名に対し, 4つのフォローアップ条件(GS : 教材視聴直後に目標設定を要請, FB : 教材の視聴前後の同僚の意識や行動の変化を視聴から3か月後に提示, 併用 : GSとFBの併用, 統制 : フォローアップなし)のいずれか1条件を職場単位で実施し, 目標行動に対する態度, 主観的規範, 行動意図の3つの心的変数と目標行動の実践状況を質問紙調査により複数回, 測定した。研修前と研修から6か月後を比較した結果, (1) 心的変数の変化量はいずれも統制群に比べGS, FBの各群で有意に大きくなり, (2) 目標行動の実践率は, 研修前に目標行動がとれているか否かにかかわらずFBによる促進効果が他の条件に比べ高い可能性が示された。最後に, 心的レベルと行動レベルでの有効性が示唆された本研究で実施したFBの効果を更に高めるための教育的工夫について提案した。

著者関連情報
© 2016 日本教育心理学会
前の記事
feedback
Top