2014 年 54 巻 12 号 p. 1063-1065
多発性硬化症(MS)の約半数では,注意障害を主体とする高次脳機能障害が出現する.Clinically isolated syndromeの約1/3でも同様の障害がみとめられ,したがって脱髄巣の経時的蓄積のみでは説明できない.昨今,特定の脱髄や脳萎縮が高次脳機能障害に関与すると報告され,一方,脳容量が大きく知的水準が高い患者は総じて代償機構が強く機能し高次脳機能障害に耐性を有することが報告された.高齢者・男性・喫煙者は高次脳機能障害のリスクファクターであり,一部の病態修飾薬は逆に高次脳機能障害出現を抑制する.したがって,MSの高次脳機能障害は促進因子と抑制因子のバランスによって決定されると考えられる.