日本看護科学会誌
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透析をしながら働く中年期男性における生活史の編みなおし尺度の開発
内田 雅子
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1999 年 19 巻 1 号 p. 60-70

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抄録

本研究は, 透析をしながら働く中年期男性の生活史の編みなおしの程度を測定する尺度を開発し, その信頼性および妥当性を検定することを目的とした. 本研究の概念枠組みは, Corbin& Straussの説く病みの軌跡における生活史概念に基づいている. 生活史の編みなおしとは, 慢性病および療養法の実践に伴う身体的, 心理社会的変化を乗り越えて病気を人生に組み込みながら, 他者との関係性を調整することである. それは同時に, 生活史をその人らしい満足感のある社会生活を目指して, 主体的に方向づけることをさしている.
研究1では, 面接調査を行い2下位尺度31項目からなる尺度原案を作成した. 20名の研究者を被験者として尺度原案の内容妥当性を検定し, 4下位尺度19項目に修正した. つぎに研究2において, 36名の透析者を被験者として尺度の信頼性および表面妥当性を検定し, 4下位尺度17項目に修正した. 最後に研究3において, 89名の透析者を被験者として尺度の信頼性を検定し, 構成概念妥当性を検討した. 最終尺度は, 因子分析結果を基に再構成し5下位尺度15項目とした. 尺度全体および5下位尺度の信頼性は, 内部整合性においてCronbach'sα.73-.83で確保された. 構成概念妥当性は, 因子妥当性の確認および因子分析前の理論的構造との比較によって, ある程度の整合性が支持された.
本尺度は, 透析者が人生という文脈において生じた生活史上の課題に, どのような方向づけで取り組んでいるのかを理解する一助となるであろう.
今後, 下位尺度を検討したうえで尺度全体を洗練させていく必要がある.

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