2005 年 111 巻 5 号 p. 300-307
福井県小浜市下加斗片地域に露出している丹波帯と超丹波帯のナップ境界断層帯の内部構造と浸透率構造を調べた.その結果,(1)両地質体は約3 mのカタクレーサイト帯を介して完全に固着して接しており,変形は幅0.2~3 cmの面状カタクレーサイトに集中していること,(2)断層帯では,石英や方解石,リモナイト脈,炭質物の濃集層のほか,多量の層状珪酸塩鉱物が晶出しており,流体を媒介とした活発な物質移動があったこと,(3) 本ナップ境界では,上盤に低い浸透率を示す砂岩層,下盤および断層帯ではそれより1~3桁高い浸透率を示す礫質泥岩層およびカタクレーサイト帯が分布していることがわかった.このような浸透率構造によって,断層帯内部に高間隙水圧が保持され,ナップの大規模な衝上運動が可能になったと考えられる.