2001 年 42 巻 4 号 p. 214-221
黄鉄鉱を含む堆積岩と酸化雰囲気の水とが接触することにより, 酸性水を発生する可能性, すなわち酸性化ポテンシャルを定量化するために, 全国各地から代表的な第三紀系の堆積岩を採取し, その粉砕試料を用いたバッチ溶出試験を行った. その結果, 溶出水pHは固相試料中の黄鉄鉱含有量だけでなく, 黄鉄鉱の酸化により発生する硫酸を中和する能力を有する方解石含有量にも依存することがわかった. さらに, 化学量論的考察から, 固相中の炭酸態炭素含有量と硫化物態イオウ含有量とのモル比が約0. 5~1以上の場合, 方解石の溶解・沈殿反応によって決定される弱アルカリ性のpHを呈し, そのモル比が約0. 5以下の場合, モル比に応じて溶出水は酸性から弱アルカリ性までの広範なpHをとり, 方解石と黄鉄鉱との溶解速度の差から溶出期間の増加とともにpHが低下する傾向が認められた.