地理学評論 Ser. A
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都市内縁地のクールアイランド現象
明治神宮・代々木公園を事例として
浜田 崇三上 岳彦
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1994 年 67 巻 8 号 p. 518-529

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抄録

東京の明治神宮・代々木公園とその周辺市街地における気温の長時間観測に基づいて,大都市内の緑地がもつクールアイランド(低温域)現象について検討・考察を行なった.その際緑地内の気温から市街地平均気温を減じた値:をクールアイランド強度 (CII: Cool Island Intensity) と呼ぶことにした.緑地のクールアイランド強度が高まる時間帯は,植栽によって特徴づけられることがCIIの日変化から明らかとなった.クールアイランド強度は,芝生地の場合,日中は小さく,夜間は大きい.樹林内の場合は,日中および夜間ともに大きい.その成因としては,夜間は芝生および樹木面からの放射冷却による効果が大きいと考えられる.また,クールアイランド強度は,天候(晴天および曇天)によってほとんど変化しない.
緑地のクールアイランド現象の観測事例として,緑地内外の気温断面図と緑地内の気温鉛直分布図を示した.緑地内外の地上気温断面図から,緑地周辺の市街地の気温は緑地内の低温な空気の流出によって低下していることがわかる.また,緑地内の気温鉛直分布から,夜闇に都市(市街地)では接地逆転が起こらないのに対し,緑地内では放射冷却による接地逆転が起こると考えられ,その高度は最高60mに達することが明らかになった.

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