第四紀研究
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「更新世・完新世の資源環境と人類」特集号
後期更新世末期の本州中央部における両面加工狩猟具利用の変遷
橋詰 潤
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2015 年 54 巻 5 号 p. 235-255

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抄録

本論は,人類による動物資源の利用にかかわる狩猟行動の変化を捉え,本州中央部における後期更新世末期の環境変動に対する人類の適応行動の一端を明らかにする.動物骨などの遺存が稀な日本列島でも,狩猟具であった可能性の高い石製刺突具の分析から,間接的ではあるが人類による動物資源の利用法の変遷について解明することを目的とする.そのために,約16,000〜11,500calBPの刺突具の欠損痕跡,平面形,横断面形の比較検討を行う.刺突具の欠損痕跡や,横断面形から使用法を推定するTCSA,TCSPの分析を取り入れ,各分析結果を相互に検証した.その結果,晩氷期を遡る木葉形尖頭器は手持ちの突き槍やダートなどの刺突あるいは投射の方法で用いられたと推定されたほか,さらにそれ以外の使用法も推定された.細形尖頭器は主にダート,晩氷期の顕著な温暖化の時期にあたる有茎尖頭器は主に弓矢の鏃,晩氷期後半の石鏃は鏃として用いられたと推定され,晩氷期の顕著な温暖化の時期に,拡大した落葉広葉樹を中心とする森林景観への進出を契機として,弓矢猟を中心とする狩猟法へ変化したと考えられる.

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© 2015 日本第四紀学会
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