Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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グライコデビュー(日本語)
古細菌のN結合型糖鎖供与体(脂質結合型糖鎖)の比較分析
田口 裕也藤浪 大輔神田 大輔
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2018 年 30 巻 176 号 p. J145-J150

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抄録

アスパラギン(N)結合型糖鎖修飾は全ての生物ドメインに存在する重要な翻訳後修飾のひとつである。オリゴ糖鎖はリン脂質キャリアー上に合成され(この化合物を脂質結合型糖鎖(LLO)とよぶ)、オリゴ糖転移酵素という膜タンパク質によってタンパク質のアスパラギン残基に転移される。糖鎖のドナーであるLLOはオリゴ糖鎖–リン酸基–脂質を基本骨格とし、真核生物ではオリゴ糖鎖–2リン酸–ドリコール、真正細菌ではオリゴ糖鎖–2リン酸–ポリプレノールで構成されている。対して古細菌の糖鎖のドナーは、これまでの解析によってオリゴ糖鎖–1リン酸–ドリコールであると報告されている。古細菌のみリン酸基の数が違うことには関心が高く、古細菌ドメイン全体で1リン酸型が糖鎖のドナーとして使用されているかどうかは非常に興味深い。本研究では、新たに4種類の古細菌を、古細菌ドメイン全体から広く選択した。培養した古細菌からLLOを抽出し、順相HPLC/ESI-MS解析によってリン脂質の化学構造を決定した。その結果、より生物起源の古いユーリアーキオータ門に属する古細菌は1リン酸型を、より真核生物の近縁であるといわれているクレンアーキオータ門に属する古細菌は2リン酸型を糖鎖のドナーとして使用していることがわかった。さらに比較研究を行うことによって、N結合型糖鎖修飾システムにおける糖鎖のドナーの進化について、新たな見解を得ることができた。

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© 2018 FCCA (Forum: Carbohydrates Coming of Age)
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