Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
Print ISSN : 0915-7352
ISSN-L : 0915-7352
リピドAの化学構造-細菌リポ多糖の主要な免疫調節活性の中心
Christian AlexanderUlrich Zähringer小久保 晋隅田 泰生
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 14 巻 76 号 p. 69-86

詳細
抄録

リポ多糖 (LPS) は、大多数のグラム陰性菌外膜の主要な構成成分であり、昆虫あるいは植物から人間へと進化する多様な真核生物における、先天性 (または自然) 免疫に関係する非常に強い促進物質であることが明らかにされてきた。敗血症ショックといった免疫反応が重篤な病的な形として現れたという所見に基づき、このクラスのバクテリアの表面分子は内毒素と名づけられた。化学 (組成) 分析、質量分析およびNMR解析を用いることで、様々なグラム陰性菌由来のLPSの化学構造が詳細に明らかにされた。細胞外にポリあるいはオリゴ糖鎖領域を持つLPSは、リピドAと呼ばれる特徴的な糖脂質によって菌体の外膜に結合している。リピドA部分はLPSにおける主要な免疫活性中心であることが証明された。メジャータイプのリピドA構造の全体像に関しては、完全あるいは改定された総説が発表されている (1、2)。この総説では、中心構造と生物活性の相関について、哺乳類における食細胞システムの免疫活性化の観点から議論する。一般的な強いアゴニスト的な (高い内毒素的な) タイプのリピドAのグループに加えて、いくつかの天然あるいは合成のリピドAは、特定の哺乳類の食細胞に対する活性化が顕著に低いかまたは全くないことが明らかにされた。後者のよりヘテロなグループのうちのいくつかにはLPS/リピドAの強い免疫促進活性を打ち消すように働くものがある。グラム陰性菌のLPSは3種の要素、リピドAの糖鎖の部分 (リピドA骨格)、先端の極性官能基の数と電荷および結合、そしてリピドA骨格に直接的あるいは間接的に結合している様々なアシル残基の数と位置および化学的な性質、により構造的な多様性が生じる。これら構造の全ての多様性のなかで、アシル化のパターンが、様々な生物システムにおける強いアゴニストあるいはアンタゴニスト的な免疫増強活性に対しては最も重要であることが示されている。

著者関連情報
© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
前の記事 次の記事
feedback
Top