Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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ゴルジ糖転移酵素の局在
Karen J. Colley川口(北爪) しのぶ
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1997 年 9 巻 47 号 p. 267-282

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抄録

糖転移酵素はゴルジ装置の特異的な嚢に区画化されることによって、基質となる糖質及び糖ヌクレオチド供与体への接触が調節され、ゆえに細胞により作られる糖鎖構造タイプも制御される。糖転移酵素活性の調節手段としての区画化のへの興味はもとより、どのようなメカニズムによりタンパク質がゴルジに局在されるのか、といった普遍的な興味のもとに、糖転移酵素のゴルジ局在化を支配するシグナル及びメカニズムが研究されている。数年間に及ぶ研究にもかかわらず、この複雑な機構の大部分は依然として謎に包まれている。現在、幾つかのタンパク質に関して明らかにされていることがある。例えば、β1,4-ガラクトース転移酵素は膜貫通領域を主要なゴルジ保留のシグナルとしているのに対し、N-アセチルグルコサミン転移酵素I、及びα2,6-シアル酸転移酵素は、効率的にゴルジに保留するためには膜内腔領域及び膜貫通領域の両方が必要であったり、独立した保留シグナルとして機能しうる領域を2カ所以上有していたりする。ゴルジ保留における細胞質領域の役割は論争を呼ぶところであり、この領域をないがしろにできないという新たな知見も得られている。ゴルジ保留に必要な配列が多様性に富むことから、2つの作業仮説が提出されている。一つ目は、ゴルジ保留には脂質二重膜の厚さが重要であるという説 (bilayer thickmess 機構) であり、これは多くのゴルジタンパク質の膜貫通領域が局在に重要であるという事実に基づいている。二つ目は、ゴルジ保留におけるオリゴマー形成/似たもの同士を認識するメカニズム (oligomerization/kin recognition 機構) であり、これは非膜貫通領域もしくは複数の領域がゴルジ保留に必要である際の説明に用いることができる。本総説ではこれらの説を支持する知見、これらの説がゴルジ保留のためにどのように両立し得るか、そしてこの領域における将来の方向性についで論ずる。

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© FCCA, Forum; Carbohydrates Coming of Age
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