2012 年 24 巻 140 号 p. 231-243
一般にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーは、すべての真核細胞に存在する。しかしながら寄生性原虫類は、哺乳細胞と比較して一細胞当たり100倍以上の数のGPI糖脂質を発現している。GPIは寄生虫の細胞外膜の抗原タンパク質をその表面にアンカーする機能が一般的である一方、タンパク質と結合してない、フリーな状態のGPIも見出される。このような寄生虫のGPIは原虫類により引き起こされる宿主の免疫応答を制御すると考えられてきた。しかしながら、このようなGPIの構造機能相関は、均一かつ充分量の研究材料を得ることが困難であるため不明な点も多い。本minireviewでは、特異な原虫GPIの構造と宿主免疫応答の開始段階におけるそれらの役割に関して要約する。筆者らはGPIアンカーの化学合成と、合成した化合物を用いた糖鎖ワクチン開発ならびに糖鎖アレイの開発への応用研究に関する最近の進捗に焦点をあてて述べる。