日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
味覚障害患者に対する24週間の亜鉛内服治療における味覚機能検査と自覚症状の経時的推移および効果予測因子
阪上 雅史黒野 祐一井之口 昭武田 憲昭愛場 庸雅任 智美池田 稔
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2014 年 117 巻 8 号 p. 1093-1101

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抄録

 味覚障害は, 初診時のみならず治療経過においても味覚機能検査の結果と患者の訴えとが必ずしも一致せず, 治療効果の評価やそれに応じた治療方針の見直しが難しい疾患である. 本研究では, 亜鉛内服治療の適応と診断された味覚障害患者44例に対してポラプレジンク150mg/日 (亜鉛量34mg/日) を最長で24週間投与し, 濾紙ディスク味覚検査法および自覚症状スコアを4週間ごとに評価し, 経時的推移を検討した. また, 効果予測因子として, 患者背景因子または濾紙ディスク味覚検査法による治療途中での評価結果に応じた治療転帰の違いについて検討した. 濾紙ディスク味覚検査法と自覚症状スコアでは異なる経時的推移を認めた. 濾紙ディスク味覚検査法の有効率は投与12週時で47.7%に達し, その後の上昇は緩やかで, 24週時では56.8%であった. 一方, 自覚症状スコアは24週時まで時間に比例した改善を認めた. 患者背景因子では, 本研究で対象とした患者においては, 味覚障害の分類を含めて最終的な効果に違いを認めなかったが, 投与12週時の濾紙ディスク味覚検査法での改善傾向の有無により明らかな差を認めた. 改善傾向にある症例は, 最終的な有効率, 自覚症状スコアともに有意に高い効果が示されるのに対して, 改善傾向を認めない症例は, その後の12週間の治療継続によっても効果が得られることは少なかった.

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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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