日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
アレルギー性鼻炎における鼻汁中非特異的IgE検査の診断学的有用性の検討
福島 慶竹内 裕美森實 理恵北野 博也硲田 猛真榎本 雅夫
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2011 年 114 巻 9 号 p. 774-779

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抄録

アレルギー性鼻炎の診断は, くしゃみ, 水性鼻汁, 鼻閉の3主徴をもち, 鼻汁好酸球検査, 皮膚テストまたは血清特異的IgE抗体, 鼻誘発テストのうち2項目が陽性の時に確診される. ところで, アレルギー性鼻炎患者の鼻汁にはIgE抗体が含まれていることは知られている. そこで, 鼻汁中非特異的IgE (以下, 鼻汁IgE) 検査のアレルギー性鼻炎における診断的意義について検討した. スギ花粉症患者22例と非アレルギー性鼻炎患者16例を対象とした. スギ花粉症患者に対しては花粉曝露前の鼻汁好酸球, 血清総IgE, スギ特異的IgEを測定し, 鼻汁IgE, 涙液中IgE (以下, 涙液IgE), 鼻汁好酸球に関しては, 花粉曝露施設で花粉曝露後のそれらを測定した. また, 水性鼻汁を主訴としMAST33で33種の抗原特異的IgEがすべて陰性であった非アレルギー性鼻炎患者16例を対象に, 鼻汁IgE, 鼻汁好酸球, 血清総IgEを測定し, スギ花粉症患者のそれらとを比較した. 鼻汁IgEは, 涙液IgEを測定する汎用検査用免疫グロブリンEキット「アレルウォッチ涙液IgE®」を用いて測定した. その結果, スギ花粉症患者では, 花粉曝露後の鼻汁IgEは血清総IgEと相関はなかったが, スギ特異的IgEと緩やかな相関を認めた (r=0.38, p=0.08). また, 鼻汁IgEは花粉曝露前・後の鼻汁好酸球と相関を認めた (r=0.43, p=0.04; r=0.55, p=0.01). また, スギ花粉症患者と非アレルギー性鼻炎患者を群間比較し, 鼻汁IgEと鼻汁好酸球検査の2つの検査の感度と特異度を算出した. その結果, 鼻汁IgEは特異度が高く, 鼻汁好酸球検査は感度が高かった. これらの結果から. アレルウォッチによる鼻汁IgE検査は簡便で客観的な検査法であり, 従来の検査法にはなかった角度からアレルギー性鼻炎を診断する新しい検査法として期待できる.

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© 2011 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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