2013 年 116 巻 12 号 p. 1315-1319
術前に頸部リンパ節結核の合併が判明した甲状腺癌頸部リンパ節転移の1例を経験した. 症例は35歳女性で, 甲状腺右葉に8cm大の腫瘤と両側頸部に多発するリンパ節腫大を認めた. 頸部リンパ節結核に対する化学療法を先行させて, 甲状腺全摘術と両側頸部郭清術を施行した. 術後の病理組織検査では甲状腺は乳頭癌, 左頸部リンパ節はリンパ節転移, 右頸部リンパ節からはリンパ節転移と結核性リンパ節炎が混在していることが判明した. 術中・術後は当院感染制御チームと相談し, 感染防止策をとりつつ治療に従事した. 近年結核の院内感染も問題となっており, この点にも十分配慮した治療が求められる.