日本耳鼻咽喉科学会会報
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上顎洞内貯留液よりみた副鼻腔炎検出菌の検討
足立 光朗古田 茂鈴木 慎也前田 太郎
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キーワード: 副鼻腔炎, 上顎洞穿刺
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2002 年 105 巻 9 号 p. 925-930

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抄録

平成11年5月から平成12年4月までの1年間に当院を受診した患者のうち,上顎洞X線陰影を認めた540例を対象に細菌学的検査(上顎洞穿刺による)を施行し,その成績につき検討した.
1) 540例中313例に細菌が認められ,313例から528株を分離,528株中303株を副鼻腔炎起炎菌として分離•同定した.急性副鼻腔炎での分離菌はS. pneumoniaeが30.4%,H. influenzaeが27.7%と多く認められ,慢性副鼻腔炎での分離菌はS. pneumoniaeが16.0%,H. influenzaeが15.1%,S. epidermidisが12.6%と多く認められた.
2) 分離されたS. aureusのうち,急性副鼻腔炎では11.1%,慢性副鼻腔炎では40.0%がMRSA,S. pneumoniaeのうち30.6%がPRSPであり,依然として多剤耐性菌の増加が認められた.
3) ciclacillinは全体の64.7%に感受性があったのに比べcefpodoxime proxetil, cefiximeは各々全体の6.5%,2.4%に感受性があるのみで,感受性は極めて低かった.1,2)も考慮し上記検出菌の動向を踏まえた薬剤を選択し,我々は副鼻腔に対する穿刺•洗浄療法を補助治療手段として活用している.

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