日本大腸肛門病学会雑誌
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びまん浸潤型を呈したS状結腸高分化腺癌の1例
北郷 実固武 健二郎山本 聖一郎小山 靖夫五十嵐 誠治
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2001 年 54 巻 3 号 p. 141-145

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抄録

著明な炎症性細胞浸潤と瘻孔様構造を伴うびまん浸潤型を呈したS状結腸の高分化腺癌の1例を経験した.症例は55歳,男性.主訴は便秘で,下部消化管の精査にてS状結腸に約7cmの全周性の狭窄を認めた.術前の生検では癌の組織診断は得られなかったが,狭窄が高度で悪性腫瘍が否定できないため,S状結腸切除術を施行した.切除標本では狭窄部の腸管壁は全周性に肥厚し,いわゆるびまん浸潤型を呈する腫瘍を認めた.組織学的に腫瘍は固有筋層まで浸潤する高分化腺癌で,粘膜下層を中心に高度の炎症性細胞浸潤を広範に認めた.病変部の粘膜面には正常粘膜が不連続に残存し,粘膜下浸潤部にも正常粘膜を認めた.本症例に類似したびまん浸潤型を呈する分化型大腸癌は過去に7例が報告されており,本症例はその発育様式について極めて示唆に富む症例であると考えられたので,文献的考察を加えて報告する.

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