日本医真菌学会雑誌
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総説
スポロトリコーシス • クロモミコーシス (含皮膚黒色真菌感染症)
楠原 正洋
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2009 年 50 巻 4 号 p. 213-217

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抄録

スポロトリコーシスは健常人におこる慢性の感染性肉芽腫であり,診断には病理組織検査と真菌培養による菌の同定が必要である.補助的にはスポロトリキン反応も有用であるが,疑陰性もあるので注意を必要とする.治療薬として第一にはヨウ化カリウム薬の内服が安価かつ効果的であるが,消化器系の副作用や,施設によっては入手困難なこともあり,次いでイトラコナゾール,塩酸テルビナフィンが選択肢となる.その他局所温熱療法も有効である.黒色真菌による深在性皮膚感染症は,菌の寄生形態によりクロモブラストミコーシスとフェオヒフォミコーシスに大別するのが一般的になりつつあるが,本邦では前者をクロモミコーシスと称する場合も多い.診療の際,クロモブラストミコーシスは鱗屑内の褐色胞子型菌要素を,フェオヒフォミコーシスは膿汁内の菌糸型を確認できるので,日々の診療での直接顕微鏡検査が重要である.菌の同定には形態学的手法と分子生物学的手法の両方が望ましい.治療では,脳転移などの重症化に注意し,確実な治療とその後の長期的な観察が重要である.症例ごとに手術療法の適応や菌種別の抗真菌薬の選択,温熱療法などとの組み合わせが必要となる.

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© 2009 日本医真菌学会
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