日本植物病理学会報
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イネもみ枯細菌病菌検出のための選択培地
対馬 誠也脇本 哲茂木 静夫
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1986 年 52 巻 2 号 p. 253-259

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抄録

イネもみ枯細菌病菌P. glumae Kurita et Tabeiをイネ体から分離するための選択培地を作成した。その組成はKH2PO4 1.3g, Na2HPO4 1.2g, (NH4)2SO4 5.0g, MgSO4・7H2O 0.25g, Na2MoO4・2H2O 24mg, EDTA-Fe 10mg, L-シスチン10μg,ソルビット10g,フェネチシリンカリウム50mg,アンピシリンソーダ10mg,セトリマイド10mg,メチルバイオレット1mg,フェノールレッド20mg,寒天15g,蒸留水1lである。6属32種63菌株の各種細菌について本培地上での発育とコロニーの形状を調べた結果, Pseudomonas属以外の細菌は発育せず,またPseudomonas属細菌でもP. glumae以外の多くの菌株では発育が抑制された。
P. glumae 37菌株を本培地上で培養したところ,菌株によりA型(赤褐色,全縁,中高)またはB型(中心淡赤紫色~赤紫色で周辺乳白色,全縁,中高,培地をわずかに退色)のコロニーを形成した。
供試したPseudomonas属細菌の中ではP. avenaeのみがP. glumaeのB型と類似のコロニーを形成し,両者の識別は困難であった。P. glumaeの本培地での平板効率はPSA, NA, YPDA各培地のそれよりも高く,本培地を使用して罹病イネ体からP. glumaeの分離を試みたところ,形成されたコロニーの48~100%が目的菌であった。P. glumae Kyu 82-34-2で作成した抗血清は極めて特異性が高く,すべてのP. glumae菌株とは寒天ゲル内沈降反応で1本の沈降帯を作ったが,供試したすべてのP. avenae菌株とは反応しなかった。従ってS-PG培地で識別できないP. glumaeP. avenaeも血清反応を利用することにより識別することが可能である。

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