牛乳カゼインを酵素分解し,得られたカゼイン分解物の脱塩を目的として,電気透析(Electrodialysis,以下EDと略記)処理を行ない, ED処理前後の灰分,タンパク質,遊離アミノ酸等の変化について調べた.試料は,すべて低阻止率RO膜(Low Rejection Reverse Osmosis Membrane:以下, LRO膜と略記)で処理されたものを使用した.
(1) カゼイン分解物のED処理では,処理温度が高い方が脱塩効率が良かった.
(2) カゼイン分解物中の灰分量と電気伝導度との関係は直線で回帰された.
(3) ED処理によって,灰分だけでなく,遊離アミノ酸も減少し,脱塩率72.5~78.6%で回収率87.8~78.4%となった.
(4) カゼイン分解物中の主要ミネラルのうち, Caが他のイオンより脱塩されやすい傾向を示したが, Naは逆に脱塩されづらかった.
(5) ED処理によって,グルタミン酸とアスパラギン酸が大きく減少し,アルギニンも減少する傾向が認められた.しかし,その他のアミノ酸は変化がないか又は濃縮される傾向を示した.
(6) ED処理は, LRO膜処理と同様に,カゼイン分解物の遊離アミノ酸由来の風味改良に効果があることが示された.