木材学会誌
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カテゴリーIII
近赤外分光法と多変量解析を用いた建築用材の識別とその汎化性能向上
喜多 祐介田鶴 寿弥子竹下 弘展杉山 淳司
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2020 年 66 巻 3 号 p. 171-182

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抄録

近赤外分光法は,樹種間におけるわずかな化学成分の違いを検出することにより,顕微鏡観察では不可能であった樹種の識別を可能とする。本研究では,近赤外分光と多変量解析ならびに特徴量選択法を用いることにより,日本の建築用材として重要かつ解剖学的に類似する樹種であるヒノキ・アスナロ属,ならびにツガとベイツガの識別について検討した。これに加えて,ヒノキ・アスナロ属の現生材で構築されたモデルを用いて伝統建築に使われたヒノキ・アスナロ属古材の識別も実施した。現生材の場合は,9割近い精度で識別が可能であることが示され,変数選択により識別に重要な波数域を定量的に示すことに成功した。古材においては,経年劣化による化学成分の変化により現生材に比べて識別率の低下がみられた。しかしながら,モデルが選択した重要変数領域が劣化に対して頑強であったために,既報に比べて高い識別率を維持したと考えられる。

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© 2020 一般社団法人 日本木材学会
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