肺癌
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症例
姑息照射後にアブスコパル効果による腫瘍縮小を示した悪性胸膜中皮腫の1例
白石 結佳平野 聡有賀 隆黒木 嗣子葉山 奈美藤田 哲雄天野 寛之中村 純中村 祐之多部田 弘士
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2020 年 60 巻 3 号 p. 187-191

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抄録

背景.アブスコパル効果とは,放射線治療において放射線照射野外の病変の縮小効果が認められる稀な現象である.悪性胸膜中皮腫においてはアブスコパル効果の報告は極めて稀である.症例.75歳男性.上皮型悪性胸膜中皮腫の術後再発に対して疼痛緩和目的に姑息的放射線照射を施行したところ,疼痛は軽減したが2か月後のCTでは照射野以外の病変の増悪を認め,血清シフラ値の上昇(36.0 ng/ml)を認めた.しかし6か月後には血清シフラ値は5.5 ng/mlと低下し,照射野以外の病変の著明な縮小を認めた.その後の再発に対して化学療法,姑息照射や全脳照射施行後にPD-1阻害剤であるニボルマブを投与したところ,1か月後にはCTでの部分的な腫瘍の縮小と血清シフラ値の低下を認めた.結語.悪性胸膜中皮腫においても放射線照射後に免疫チェックポイント阻害剤の効果を期待できる可能性,あるいはアブスコパル効果の出現が免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子になる可能性が示唆された.

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© 2020 日本肺癌学会
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