肺癌
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原著
肺がんの発症に関わる遺伝子多型
白石 航也
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 58 巻 5 号 p. 331-337

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抄録

肺がんは男女ともにがんの部位別死亡数の上位を占める悪性腫瘍であり,進行肺がんの予後は20%と極めて低い.しかしEGFR体細胞変異をはじめとするドライバー遺伝子変異に対する分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害剤の登場により,非小細胞肺がんに対する治療法は大きな転換期を迎え,極めて予後不良だったIV期の進行肺がんの治癒も現実味を帯びてきている.一方肺がんの罹患率は,禁煙の取り組みにより男性肺がんにおいて今後減少が期待できる.しかしもともと喫煙率が低い女性肺がんの発症数は,男性に比べると期待されるほど減少しないと考えられる.また喫煙者に対する免疫チェックポイント阻害剤の治療効果は十分期待されるが,非喫煙者特に女性非喫煙者肺がんではEGFR変異といったドライバー変異を伴う場合が多い.そのため,免疫の惹起に関わる喫煙に依存するネオアンチゲンが認められないため,免疫チェックポイント阻害剤の恩恵が得られない可能性が指摘されている.したがって非喫煙者特に女性に対する肺がん発症要因の同定は,今後さらに重要性を増すと考えられる.本稿では,これまでに同定されてきた肺がんの発症リスク要因と今後の研究の展望について述べる.

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© 2018 日本肺癌学会
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