肺癌
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症例
肺腺癌の多発脳転移でgefitinibが奏効し原発巣及び転移部位でEGFR遺伝子変異を検討しえた1例
塙平 孝夫高尾 匡善家 義貴四竃 純箱田 有亮井上 智治
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2009 年 49 巻 3 号 p. 282-286

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抄録

背景.肺腺癌の多発脳転移の症例で治療の前後でEGFR遺伝子変異が解析されていることはまれである.今回,我々は肺腺癌の多発脳転移の症例でgefitinibが奏効し,原発巣では治療前及び剖検時,転移部位においては剖検時にEGFR遺伝子変異を検討しえた症例を経験したので報告する.症例.44歳女性.咳嗽,呼吸困難を主訴に来院.来院時,胸部X線写真にて右胸水と腫瘍影を認めCT下肺生検にて肺腺癌組織を認めた.遠隔転移は認めずStage IIIBと診断しcarboplatin(CBDCA),gemcitabine(GEM)2コースを施行したが胸水の増量を認め,その後docetaxel(TXT)4コースを施行したが多発脳転移を認めPDであった.全脳照射は希望されずgefitinibの内服を行い病状が悪化し入院するまで約6ヶ月間,外来通院が可能であったが,その後,病状悪化し永眠された.結論.肺腺癌の多発脳転移で肺原発巣生検組織のEGFRのexon 19領域における遺伝子欠失を認めgefitinibが有効な症例であった.剖検では肺原発巣及び脳転移部位においてのEGFR遺伝子変異はともに認められずgefitinib抵抗性に変化したと考えられた.

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© 2009 日本肺癌学会
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