2021 年 77 巻 1 号 p. 65-73
本研究は大阪湾沿岸の付着生物の調査を実施し,栄養塩低下と付着生物の分布の関連性を明らかにするために検討を行った.具体的には13年前に実施した調査地点を中心に調査を行った結果,生物相に大きな変化はなかったが,春季の海藻の種数は湾奥において増加しており,ワカメやクロフジツボ等の付着生物は環境勾配の変化に従って,湾奥に分布域を拡大していた.長期間のモニタリングデータを用いて大阪湾沿岸の水質変化を検討した結果,2000年からの栄養塩は減少していた.また,水質を用いて特徴的な生息分布を示した生物種に関し,Maxentを用いて分布に寄与する要因を解析した結果,栄養塩を主として透明度や塩分,護岸構造物の種類が寄与していると考えられた.大阪湾沿岸における栄養塩の低下は付着生物の分布に影響を及ぼしていることが示唆された.