2016 年 72 巻 2 号 p. I_1291-I_1296
東京湾奥部における過去約30年にわたる底質堆積特性を把握するため,湾奥部全体を網羅するよう39測点を設定して表層採泥および柱状採泥を行い,底質粒度分布や全炭素(TC)等の底質項目とPb-210およびCs-137の放射能測定に基づく堆積年代推定を行った.クラスター分析から底質域を4つのグループに分けることができ,湾奥中央の中心部の周辺でTCが最大となる特徴や,河口や陸岸からの距離,堆積速度,および貧酸素水塊への曝露頻度が影響を与えている様子が推察され,これらの特徴は底質堆積過程の数値再現に有用な情報を提供している.さらに,コア試料の年代推定と既往の知見から,TCは1980年代にピークをとり,その後減少傾向を示した後,近年は再び上昇している傾向が示され,近年においても湾奥部における貧酸素改善の傾向が見られないことの原因の一つを示唆しているものと考えられる.