2013 年 69 巻 4 号 p. 491-503
複雑なすべり線を呈する自然斜面の地震時安定性評価を行うにあたり,実務的な地震時残留変位量の算定法は確立されていない現状がある.また,取り扱う入力地震動は主に水平成分のみを考慮し,鉛直成分はほとんど考慮されていない.そこで,本論文では複雑なすべり線を呈する斜面の地震時残留変位量の算定方法を提案し,入力地震動の水平成分と鉛直成分の位相を変化させて地震時残留変位量に与える影響を検討した.提案法の妥当性の確認のため,単純な斜面モデルを用いて検証を行った.検討の結果,入力地震動の水平成分と鉛直成分の位相の組み合わせによっては,すべり線方向に慣性力が最大となる組み合わせが存在し,地震時残留変位量が増加する可能性があることが分かった.